図面作成の流れと進捗管理の重要性
― はじめに
建設プロジェクトにおける円滑な進行と品質確保には、正確な図面作成が必要です。
本記事では、図面作成の定義と流れについて解説します。
― 図面作成とは
図面作成とは、対象物を平面または立体上に図示するもので、設計者、発注者、施工者などの間で、必要な情報を伝えるための手段として使用されます。
図面とは「情報媒体、規則に従って図または線図で表した、そして多くの場合には尺度に従って描いた技術情報」(JIS Z 8114)と定義されています。また製図には誰が描いても読み手が同じように解釈できる、つまり答えを一つにするための世界共通のルールがあります。この世界共通ルールに従ったものがISO(国際標準化機構)です。日本の国家規格であるJIS(日本産業規格)の製図もISOに準拠しています。図面は、単に寸法を漏れなく記入するだけの紙切れではなく要求仕様書であるとも言えます。
― 設計者、発注者、施工者の役割
建設プロジェクトの成功には、設計者、発注者、そして施工者の役割分担が欠かせません。設計者は精密な設計図を通じてプロジェクトの全体像を明確にし、発注者はこれを評価し施工計画の基礎を描きます。施工者は現場で具体的な施工計画を実行し、作業の進捗や品質を確保します。
― 図面作成の流れ
設計から施工までの図面作成は、設計者、発注者、施工者の順に流れていきます。段階としては大きく設計段階と施工段階に分かれます。
設計段階からみていきます。まず設計者が発注者から提供された地形図などを基に規格寸法や設計施工条件を明示する設計図を作成します。設計図は業務委託の契約図書に基づいて作成され、発注者に納品されます。万が一、工事発注後に設計図に瑕疵が見つかった場合、設計者が修補を行います。
その後、発注者は納品された設計図を「当初設計図」「参考図」「その他」に分類します。
- 当初設計図:建設プロジェクトの規格寸法、並びに設計施工条件を明示した図面。
- 参考図:当初設計図以外で、参考提示する図面として取扱われる。
- その他:施工計画に関する図面などで、工事発注において「設計図書」とはしないもの。
次に施工段階へ移ります。当初設計図に基づき施工者が施工にあたり必要に応じて自らの裁量で「施工図」を作成します。工事完了後、施工者が完成状態を記録した「完成図」を作成し、最終的に発注者へ納品します。この間に、設計変更がある場合、変更設計図が作成されます。
- 変更設計図:工事が進行する中で、実際の現場が当初設計図に示された条件と一致しない場合に作成される図面。
- 施工図:施工者が自らの裁量で必要に応じて任意に作成する図面。施工者の内部資料として利用されるもので施工の詳細な手順や特定の施工方法を示すために使用される。
- 完成図:工事が完了した後、完成状態を記録した図面。
図面作成の流れは、設計図の作成から始まり、参考図、変更設計図、施工図、そして完成図へと進んでいきます。各段階での図面は、それぞれの目的と役割があり、プロジェクトの円滑な進行を支えています。
― 図面作成プロセスにおける課題
図面作成の流れをみてきましたが、各段階において重要なのが図面確認です。設計段階や施工中には図面の修正が必要になることがあります。FAB、作図会社とゼネコンの間で複数回の修正とやり取りが発生するため、以下のような課題が生じます。
-
最新図面の保存場所がわからなくなる:複数回の修正とやり取りが発生すると、最新の図面や過去のバージョンの保存場所が不明瞭になることがあります。図面を探すために多くの時間と労力が必要となり、誤った図面を使用してしまうリスクが高まります。
-
図面のステータスが不明瞭になる:図面の作図、チェック中、承認等の各ステータスが不明瞭な場合、次の工程に進むための準備が遅れ、全体のスケジュールに影響を及ぼすことがあります。
-
進捗確認の工数が増える:担当者同士の確認作業が増えることで、実際の作業に集中できる時間が減少し、全体の生産性が低下します。
これらの課題を解決するためには、関係者間のコミュニケーションを強化し、図面管理システムを導入してバージョン管理や修正履歴の追跡を行うといった対策が求められます。こうすることで施工品質の向上や安全確保、再作業によるコスト増加の抑制につながります。
― まとめ
建設プロジェクトの成功には、正確な図面作成と図面の管理が不可欠です。設計者、発注者、施工者の各役割を明確にし、設計から施工段階までの図面作成プロセスを理解することが重要です。また、図面確認の際には、修正履歴の管理や最新情報の共有が求められます。これを実現するためには、図面管理システムの導入が効果的です。関係者間のコミュニケーションも強化されます。適切な図面管理と、効率的な運用をすることで、施工品質の向上や安全確保、再作業によるコスト増加の抑制が期待できます。